ドキッと心臓が高鳴ってしまった。
急に抱き締めてきたから
すると課長は、ニヤリと笑ってきた。
「決めた。今夜も覚悟をしておけよ?結衣。
たっぷりと可愛がってやるから」
その笑い方は、魔王様の表情だった。
えぇっ!?
今夜も倍におしおきをされそうだ。
私の身体が持つだろうか……。
そして、それから来年になり
運命のパラリンピック出場者が発表された。
東京パラリンピックの正式出場者は、
電話で知らせが届くことになっている。
もちろん課長にも……。
「えっ?は、はい。
ちょっとお待ちください。亮平さん大変。電話が……」
慌てて課長を呼んで代わった。
優勝したんだから出場のお知らせが来るはずなのだけど
いざ発表になると緊張してしまう。
「はい。ありがとうございます。
では、失礼致します」
課長が丁重に対応すると電話を切った。
そしてふぅ……とため息を吐いていた。
どうしたのかしら?何だか不安になってしまう。
「どうでしたか?」
「決まった。パラリンピックの出場が」
「本当ですか!?やった~」
あぁ、これでお父さん達にも見てもらえる。
私は、嬉しくて課長に抱き付いた。
あ、と気づいた時は、少し照れてしまう。
すると課長は、クスッと笑ってくれた。
「まだ出場が決まっただけだ。大変なのは、
これからだぞ。なんせ日本代表として行くのだから。
ロンも居るし、モタモタしていたら
差をつけられてしまう。
俺も今以上に努力をしないと……」
そうか……そうよね。
課長は、あくまでも日本代表として出場するのだから
浮わついていたら応援してくれる人達にも失礼よね。