走る姿を見ていると私まで走りたくなる。
まるで魔法にかけられたかのように身体が
うずいて仕方がない。
そして見事ぶっちぎりの1位になった。
決勝に進むことになった。
決勝では、ダークホースの永井さんと競うことになる。
どんな競走になるのだろうか。
不安とドキドキした気持ちになっていた。
大丈夫かしら?
そして休憩をしながら私は、課長に
飲み物を渡したりマッサージする。
少しでもリラックスして走ってもらいたい。
「いよいよですね。決勝」
「あぁ相手は、強敵だ。1秒でも気を抜いたら最後だ。
全力で走らせてもらう」
課長は、いつになく真剣な表情していた。
それぐらい気が抜けない選手ってことだろう。
これでパラリンピックの選手になれるかが決まる。
やるからには、きっと好成績を残したいだろう。
課長の目標は……もっと高いから。
「頑張って下さい。応援しています」
私は、飛びっきりのエールを課長に送った。
もちろん笑顔で。
「あぁ、やられる前に数倍返しだ!」
課長は、ニヤリと笑ってくれた。
魔王様が顔を出している。これは、最強だ!
しかしその時だった。永井さんがこちらに来た。
私は、一瞬戸惑った。何の用だろうか……?
選手同士の顔合わせは、緊張する。
すると課長は、立ち上がり永井さんと向き合った。
「日向さん。決勝進出おめでとうございます。
俺、ずっと見ていてすげぇ感動しました」
永井さんは、敵だと思えないほどの
笑顔で言って握手を求めてきた。
これは、余裕からなのだろうか?
「あぁ、ありがとう。
永井君だったな。そちらこそおめでとう」
「うわぁ~ありがとうございます。
もう決勝に残れるかドキドキしていたんッスけど。
無事に残れて良かったです」