「なかなかいいところでしょ?
ここは、設備もいいだけではなくて有名選手を
育成するのにも力を入れているらしいわよ」
綾音がそう言って教えてくれた。
有名選手を育成しているのか……それは、
なかなか凄いわね。感心しながら周りを見ていた。
「悪いのだけど、私そろそろ行かないと。
こっちにも顔出しなよ!
帰りは、一緒に帰ろう。連絡して」
「うん、分かった。またね」
インストラクターとして仕事があるらしく
綾音と途中で別れる。
さて、どうしよう。
陸上でも見て行こうかな?でも……。
見るときっと走りたくなるだろうな。
そして、思ったように走れない自分に苛立つだろうし……。
正直見るのに戸惑っていた。まともに向き合うのに
臆病になっているのかもしれない。
しかし、その時だった。
「あれ?二階堂ではないか?」
えっ?その声は……。
この低くてゾクッとする声に見覚えがある。
慌てて振り返ると日向課長だった。
やっぱり。でも、何でここに!?
「どうして……課長がここに」
しかしよく見たらウォーミングアップをしていたのだろう。
ジャージ姿で汗をかいていた。
それに……うん?
よく見ると課長の右足が何だかバネと言うか
ロボットのような特殊な形をした足になっていた。
何……あれ!?
見たこともない右足に驚いてしまった。
普段は、ズボンで隠れて見えないけど
あれが義足と言うやつかしら?
初めてみる義足に一瞬、戸惑ってしまった。
やっぱり課長は、義足なんだと改めて気づかされた。