「えっ……は、はい。」
夏美さんは、それを聞くと頬を真っ赤にさせた。
そしてモジモジしている。さっきまでの勝ち気さと違い
夏美さんは、何だかしおらしい。
もしかして夏美さんは、松岡さんのことが
好きなのだろうか?だとしたら何とも
微笑ましい組み合わせだろうか。
何となくお似合いな気がするし。フフッと思いながら
私は、ベランダでビールを飲んでいた。
すると源さんの奥さん・春子さんがこちらに来た。
「話は聞いているわ。
ご両親に結婚を反対されているのですってね?」
「はい。お恥ずかしながら……」
「フフッ……懐かしいわね。私もね。
両親に随分と反対されたのよ」
春子さんは、外の景色を見ながら
フフッ……と笑ってきた。えっ?
春子さん達も私と一緒だった!?
懐かしそうに話す春子さんに私は驚いた。
「どうやって説得をされたのですか?」
「まぁ私の場合は、すでに結婚した後だったのだけどね。
新婚1年目で主人が交通事故に遭って重症になってね。
命は助かったけど最初は、ベッドから
起き上がるのも困難で親や周りに離婚を勧められたの。
下半身が麻痺になって一生歩けない身体。
子供も無理だろうと言われてなら若い内に離婚して
新しい人と一緒になった方がいいって。
私は、絶望的になって本当に迷ったわ。
幸せになるはずで結婚したのに……どちらが
幸せなんだろうって」
切なそうに話す春子さんを見て
胸が締め付けられそうになった。
新婚1年目なんて……幸せ真っ盛りの頃だ。
そんな時に事故だなんて絶望的するのも無理はない。
きっと凄く辛かっただろうな。
自分だったらと思うと胸が苦しくなった。
「それで……どうなさったのですか?」
「フフッ……そうしたらね。
お先真っ暗になりながらお見舞いに行ったら
あの人ったらね。私に“早く退院して
お前のご飯が食べたい”って言ったのよ。
しかも笑顔で……本当能天気なんだから。
でも、その笑顔を見ていたら気づかされたの」
「私は、健常者だった主人を好きになった訳ではない。
ひょうきんであの優しい笑顔が好きで
結婚したんだって。
そうしたら悩んでいる自分が馬鹿らしくなっちゃって。
一緒にもう一度やり直そうって思えたのよ」