課長は、そんな私を強く抱き締めてくれた。
幸せを実感するのだった。
そして晴れて婚約することになったが
いつ両親に挨拶に行くか?となったとき
課長は、なるべく早くするから
少し待っていてほしいと言われた。
色々と準備があるからと……。

準備って……何の準備だろうか?
男性は、何かと準備が必要なのだろうか?
私は、そんな風に思っていた。
両親のところに挨拶しに行ったのは、それから
2週間経ってからだった。

「無理を承知で言います。娘さんを俺に下さい」

両親の前でビシッとスーツで決めた課長は、
結婚のお許しをもらうため頭を下げてくれた。
その際に私の上司だってこと
そして義足で身体障がい者だってことを全て話した。
しかし父の反応は……。

「悪いが……この結婚は、認めることはできん」

意外で冷たい返答だった。
な、何で!?

「どうしてよ!?お父さん」

信じられない。どうして反対をするのだろうか。
職業だって人柄だって立派なのに。

「それは、俺が身体障がい者だからですか?」

えっ……?
驚く私と違い冷静な課長は、そう言った。
すると両親は、チラッとお互いを見ていた。

「……そうだ。あなたが上司として娘が世話に
なっているのは、とても感謝しています。
ただ結婚となると話は別です。片足がないってことは、
その分、娘が負担になってしまう。
娘に苦労も恥もかかせたくない」

お父さん!?
その偏見みたいな言い方に唖然とする。
自分の親でも信じられない。酷い……。

「お父さん。それって酷くない!?
私は、苦労も恥もしないわよ!!」

「お前は、まだ何も知らないんだ」

「知らなくないわよ!
亮平さんは、とても素敵な方よ。
ストイックなほど真面目で誠実で私には、
勿体ないぐらいだわ」