「確かにフラれてしばらくは、未練もあった。
だから余計に自暴自棄になり塞ぎ込んでいた。
でも篠原コーチに出会い。
俺に新しい目標を見つけてくれて
ひたすら努力をした。そして初めて
パラリンピックという大きな大会に出場して
人生が変わった。その時は、銀メダルしか
取れなかったけど俺にとったら金メダルよりも
価値があるように思えた。ゴールを切った瞬間
自分自身で何かが吹っ切れたんだ」

課長は、そう言うとフッと静かに笑った。
私は、それを聞きながら思った。
課長にとったらパラリンピックは、
人生を変えるぐらいのことだったのだと
血の滲むような努力をして挑戦した世界大会。
確かに、どのメダルでも価値のあるものだろう。

「俺にとって佳奈とは、その時に全て吹っ切れて
終わらしている。もう過去の人間だ。
それに今の彼女は、結衣……お前だ。
俺の人生にお前は必要だ。だから信じろ」

頭を優しく撫でながら言ってくれた。
課長の人生に私は必要……。
その言葉は、プロポーズみたいでとても嬉しかった。
思わず涙が溢れてくる。
すると課長は、抱き寄せながら

「だから今度……。
お前の両親に挨拶をしに行きたい」と言ってくれた。

えっ?両親に挨拶!?
私は、慌てて起き上がった。えぇっ……それって。

「か、かちょ……ではなかった。亮平さん。
本気ですか?私の両親に会いたいって!?」

驚いていると課長は、同じように起き上がった。

「本気も何も結婚前提に付き合うなら
当然のことだろう。
急だと思ったが、今日みたいなことがあると困る。
それなら、きちんとけじめをつけたい」

「どのみち、遅かれ早かれ挨拶に行くつもりだったから
少し早くなったと思えばいい。
俺は、真剣にお前との結婚を考えている。
結衣。俺と一生添い遂げてくれ」

真剣に私にプロポーズをしてくれた。
驚いたけど私も……課長となら結婚したいと思った。
怖いところもあるけど、誰よりも一途で真面目な性格。
何よりストイックで努力家だ。

きっと結婚をしたら私や家庭のことを
愛して守ってくれるだろう。
断る理由なんて1つも無かった。

「はい。」

私は、2つ返事で返した。
涙が溢れて最高に幸せな気持ちになった。
心の底から嬉しい……。