そう話した課長は、切なさとか
未練とかより……むしろキレる寸前だった。
「しかも、さっさと別の実業家の男を見つけて
結婚しやがった。アイツにとって
俺は、それだけの男だったってことだ。なのに
この前みたいに結衣……お前が隣に居るにも関わらず
俺に声をかけてきやがった。
その無神経さに怒りを抑えるのにどれたけ苦労したか」
「最終的には……今日スポーツクラブにまで来て
旦那と別れただの。あなたの頑張りに見直しただの。
忘れられなかっただの……好き勝手に言いやがった。
俺は、どんな想いで努力したか考えずに
思わず絞め殺そうかと思ったぞ」
ドンッと壁に拳をぶつける課長。
み、未練……ってそういう問題ではなかった。
魔王が……顔を出している!?
怒り心頭の課長は、凄く怖かった。
思わず血の気が引いたほどだ。怖い……。
震えていると課長は、ギロッと私を睨んだ。
「いいか……?俺は、何の努力もせずに
出来ないだの無理だのと言う奴が死ぬほど嫌いだ。
だから未練なんて…そんなくそみたいな感情なんて
持っている訳がない。なのに……結衣。
お前は、何だ?よく確かめもせずにイジイジといじけて
アルバムなんて聞けばいいだけの話だろ?」
「は、はい。すみません……」
いつの間にか怒りが私に向けられていた。
ひぃぃっ……!!
「大体な。俺の今の彼女は、結衣。
お前だろーが。何でいちいち元カノと比べて
落ち込んでいるんだ?お前は、お前だろ。
どれだけ俺のこと信用出来ないんだ!?」
「だって、凄く不安で仕方がなかったんだもん」
恐怖で半べそになりながらガタガタと
震えていると課長は、ハァッとため息を吐くと
徐にスーツの上着を脱ぎ出した。そして
ネクタイを緩めながら
「もう御託はいい。どうやらお前には、
身も心も徹底的に叩き込まないと分からないようだな。
分かった。俺が一晩中かけてたっぷりと教え込んでやる。
二度とこのような事態にならないためにも
徹底的にな。お前も最初そう思ったんだろ?」
ニヤリと不敵に笑った。ひ、ひぃぃっ……!?
どうやら私は、自分で地雷を踏むどころの
騒ぎではなかった。
魔王が……降臨したー!!
そして私は、二度と元カノのことは、
口に出すまいと心に誓ったのだった。
ベッドの上でぐったりとしていると課長は、
昔を思い出すように語ってくれた。