そうなんだ……歩けるようになっても
もう前みたいにバスケが出来ないんだ……?
考えただけでも胸が押し潰されそうだ。

それもまた、気の毒で仕方がなかった。
そんな状態で説得をするには、かなり大変だろう。
だから、疲れた表情をしていたのだろうか?

「そんな状態で説得するのは大変ではないですか?」

「まぁ、確かに大変だが俺は、
アイツに期待をしている。
アイツは……いい目をしているからな」

すると課長は、クスッと思い出したように笑った。
その表情は、疲れているってより誇らしげだった。
えっ……?
いい目?どういうこと?
私は、不思議に首を傾げた。

「一番悲しいのは、死んだ目をしている奴だ。
全てを諦め……それを受け入れるが
その代わりいつ死ぬか
何もかも諦めてどうでもいいと思っている人間だ。
だがアイツは、違う。目がギラギラしている。
まだ今の自分を活かせる場所が分からずにもがいて
苦しんではいるが……人世を諦めている訳ではない」

「あぁいう奴は、目標を見つけてやり
歩き方を正しく示してやれば驚くほどに成長をするぞ。
俺は、そういう奴は……嫌いではない。
その辺は、お前も翼君と同じ目をしているな」

課長は、私を見ながらそう言ってきた。
えっ……私が!?
違う……私なんかがいい目なんかしていない。
諦めてばかりの私が……。

「む、無理です。私は、そんな目をしていません」

慌てて否定する。
私だって、もう昔と同じように走れなくなったと
分かった時は、かなり沈んだから。
今も何の目標もなくて何を生き甲斐に
生きているか分からないぐらいなのに……。

「いや……同じ目をしている。
面接の時に感じたが今の自分に納得をしていない。
もがいて苦しんではいるが、その抜け出す
ヒントがあるのなら今すぐに抜け出したい。
そう思っているのではないのか?」

課長の言葉や鋭い目で見られたとき……正直
ドキッとした。
まるで私の心の中を見透かされているようだった。

そう……私は、今の自分に納得をしている訳ではない。
もし、このやりきれない気持ちを立ち切れるのなら
私は、それに賭けたいとも思っている。

だから……課長の走りを見ていて
何か私にも出来るのではないかと思えた。
確信ではないけど……身体がうずいた。