私は、嬉しくなって課長のため一生懸命
コーヒーを淹れた。
そして淹れたコーヒーを課長に差し出した。
「あぁ、ありがとう」
課長は、コップを受け取るとすぐに一口飲んでくれた。
どうだろうか……?
「うん。旨い……」
「本当ですか?良かった……」
美味しいと言われてホッと胸を撫で下ろした。
そして私もコーヒーを淹れようとした。
しかし、そこで今、課長と2人きりだと気付いた。
どうしよう……余計に緊張しちゃう。
何か話さなくちゃあ!!
慌てて話題を考える。するとフッと今井さんの言葉を
思い出した。そういえば……。
「あの、さっき今井さんから聞いたのですが
中学生の男の子のお見舞いに行かれていたのですよね?
検診と一緒に……」
「あぁ、聞いたのか。そうだ。
翼君っていうのだがバスケが好きな子でね。
小学校からずっとやっていたらしいが
交通事故で右足が麻痺して動かないらしい」
私から話題をふってみると
課長は、コーヒーを飲みながら詳しく説明してくれた。
バスケ……それは、また災難だとしか言いようがない。
どんなに辛いだろう……。
きっと私と同じで泣いて枕を濡らしているのだろう。
そしてどうしたらいいか分からずに
絶望しているかもしれない。
「それは……可哀想ですね」
私がそう言うと
少し切なそうな表情する課長だった。
課長も自分と重なって見ているのかもしれない。
「あぁ、そうだな。すっかり塞ぎ込んでしまって
病室でもかなり暴れていた。無理もないが……。
俺が訪れた時は、ろくに口も聞いてくれなくてな。
それでも度々訪れては、話しかけたりしていたら
少しずつだが……話してくれるようになった。
翼君は、手術をすれば……少しでも
歩ける見込みがあるのだが、それでも後遺症が酷くてな。
歩けるようになっても杖が必要だったり
今までのようにバスケをするには、困難らしい。
だからか手術を嫌がって今、それを
説得するのに苦労している」