すると紺野さんは、私に近付きながら
笑顔で断ってきた。
えぇっ!?新人限定……そうだったの?
知らない真実に私も驚いた。
すると紺野さんは、私にボソッと

「先輩達なんか連れて行ったら、桐山君を
独占されるから嫌なのよね」と聞こえるか
聞こえない声で呟いてきた。
こ、紺野さん……。
思わず耳を疑いそうになった。

「えっ?何か言った?」

「いえ。課長が居るとうるさいよねぇ~と
言っていただけですよ。ウフフッ……」

笑顔で言い切る紺野さんに凄いなぁと思った。
裏表が激し過ぎる。怖いと思った。
私は、苦笑いすることしか出来なかった。
しかしその時だった。

「ほう……?俺がうるさいとは、
随分と言われようだな?お前ら……」

課長が給湯室に顔を出してきた。
か、課長!?
心構えをする前に現れたので驚いてしまった。

「お前ら、くだらない話をしている時間があったら
頼まれた仕事を早く終わらせろ。ここは、
仕事をするところだぞ!!」

「は、はい。すみません」

紺野さんと先輩女性社員達は、叱られると
バタバタと逃げるように給湯室から出て行く。
私は、驚いて取り残されてしまった。
まだコーヒーの準備すら出来ていないのに……。
どうしようと思っていたら課長は、やりかけの
自分のコップに気づいた。

「……なんだ。俺にコーヒーを
淹れようとしてくれていたのか?」

「えっ?す、すみません。
お疲れに見えたので……その。
勝手ながら淹れようとしていました」

いけないと思い慌てて謝った。
すると課長は、クスッと笑ってくれた。

「淹れようとしてくれたのに謝る必要はないだろ?
今、コーヒーを飲みたいと思っていたから助かる。
すまないな。二階堂」

「いえ。待ってて下さい。
今すぐ淹れますから」