「あの……二階堂結衣です。よろしくお願いします」

緊張しながらも挨拶した。
すると夏美さんは、何も答えずに私をジッと見てきた。
えっ……?
何でそんなに見られているのだろうか?

意味が分からずにきょとんとした。
そうしたらニコッと微笑んできた。

「こちらこそ。よろしくお願いします。
篠原夏美です」

何も無かったかのように挨拶してくれた。
一体何だったのだろうか?
その後も彼女は、普通に接してくれた。
さっきのは、気のせいだったのだろうか?
不思議に思いながらウォーミングアップをしていると
しばらくして課長が現れた。

「すみません。遅くなりました」

「いや、構わないよ。じゃあ、
日向君も軽くウォーミングアップしておいて」

「はい。」

そう言うと課長は、ストレッチを始めた。
プライベートで会うと何だか不思議な気分だ。
遅くなったのは、仕事があったのだろう。
私の方は、ウォーミングアップを終わらせて
篠原さんのところに向かった。

「終わったかな?なら軽く走ってみようか。
君は、短距離走だったよね。
どれぐらいの走りか見てみたいから」

いよいよ、まともに走るのね。
久しぶりに走るので、緊張してしまう。
それに……。そっと右足に触れた。
怪我のこともにあり上手く走れるか分からない。
私は、不安になりながら返事をすると
スタート地点に向かった。

えっと……タイミングと姿勢は。
昔のやり方を確認しているとチラッと
課長を姿が見えた。
もしかして走っている姿を見てくれるのだろうか?
だが課長は、夏美さんと一緒に居た。
タオルを渡され何か楽しそうに話しているではないか。

えっ……?
課長と夏美さんって仲がいいの?
2人の仲のいい姿を見て動揺してしまった。
何だか胸がズキズキと痛みだした。

「二階堂さん。いいかい?」

「あ、はい。お願いします」