背中をバシッと叩かれてしまう。
綾音……痛いわよ。まぁ、そうだといいけど……。
微妙な気持ちのまま帰って行くのだった。

翌日。いつもの通りに会社に行くと早くに
課長が出勤していた。
普段通りに部下を叱り飛ばす課長だったが
前見たいに理不尽だとか怖いとか思わなくなっていた。
課長は、それだけ努力をしている人だから
人に言うだけの説得力はある。

「二階堂。ボーとしないで仕事をしろ。それと
早く頼まれた報告書を出せ!!」

「は、はい。すみません」

いや、やっぱり……怖い。
普段の課長は、鬼課長と言われるだけあって
なおさら怖さが目立っていた。
慌てて仕事に取りかかりながらチラッと
もう一度課長を見てみた。

でも課長が凄い選手だと知っているのは、
私と一部の人だけなんだ。
そう思うと何だかちょっと……嬉しかった。
何でだろう……?
自分の変化に戸惑い不思議で仕方がなかった。

夕方近くになると仕事を片付けて
私は、早速スポーツクラブに足を運んだ。
女子更衣室でジャージに着替えると陸上のトラックに
向かった。すでに数人の人達が走り込みをしていた。
私は、何をしたらいいのだろうか?
誰か居ないかとキョロキョロと探してみるが
課長は、まだのようだった。

「やぁ、二階堂さん。
早速来てくれたんだね?」

「あ、はい。よろしくお願いします」

篠原さんが声をかけてくれた。
あ、篠原さんならどうしたらいいのか分かるかも。
すると篠原さんの後ろから大学生ぐらいの女性が
ひょっこりと顔を覗かせてきた。茶髪で目が大きくて
小柄のとても可愛らしい女性だった。

「ねぇ、この人?
日向さんの部下って人?」

するとその女性は、突然私に対してそう言ってきた。
えっ……?
何故そこで課長の名が……?

「あぁ、そうだよ。二階堂さん。
こっちは、娘の夏美だ。私のアシスタントとして
君達の手伝いをするからよろしく頼むよ!」

篠原さんは、ニコッと笑顔でそう説明してきた。
あ、そうなんだ?
篠原さんに、こんな大きな娘さんが居たのね。