綾音は、まるで自分のことのように喜んでくれた。
そうか……私は、塞ぎ込んでいたから
綾音には、心配ばかりかけていたものね。

「ありがとう……綾音」

改めて自分のを状況を再確認したのと
親友の有りがたみを知った。
しかし、そこから立ち上がって選手になった課長は、
一体どれだけの努力をしたのだろうか?

私は、フッと課長のことを考えた。
きっと……私が想像する以上に大変だったに違いない。
悔しくて、涙を流したこともあったのだろうか?
怖くなかったのだろうか?

「結衣。結衣ってば聞いてる?」

ハッとする。

「あ、ごめん。何?」

「それで、どういう心境の変化なのよ?
意地でも陸上から遠退いていたあんたが
急にやりたがるからには、何かあるのでしょ?」

綾音の言葉にギクッと肩が震えた。
さすが親友なだけあって……鋭い。
結局私は、綾音に課長に会ったことを全て話した。

「えぇっ~!?
元・パラリンピックの金メダリスト!?」

綾音が驚くのも無理はない。
私も最初聞いた時は、かなり驚いたもの。
課長が、そんな凄い人だったなんて。

「あ、そういえば聞いたことあるわ。
陸上に凄い選手が居るって……私、水泳だから
曖昧に聞いていたけど、あれってあんたの所の
課長さんのことだったのねぇ~なるほど」

何だか納得される。
綾音のところにも凄い選手として噂が流れているんだ?
そう考えるとやっぱり課長は、凄い人なんだ。
私も感心してしまった。だが、課長が有名でも
自分の事とは関係がない。むしろ
私の気にかけることは、ブランクなのだ。

「でも、私に出来るかなぁ~?
長いブランクがあるし」

「何、弱気になってんの。
結衣は、もともと運動神経がいいのだから
走って行く内に感が戻ってくるわよ。頑張って」