正直自分でも驚いた。
まさか自ら進んでやりたいなんて言うのだから。
だけど課長の走りを見ていて
私もあんな風に走れたら……と思った。

気持ち良さそうに風を切る姿。
私も同じように走りたくて感情が高ぶってしまう。
避けていたはずなのに身体中がうずうずしていた。

「いいのか……?
俺に気を遣ってやると言っているのなら
無理だけはするな。怪我があるのだろ?」

課長は、私の足のことを心配してくれていた。
確かに脚の不安はある。
でも……それ以上に走りたいと思った。

「いいえ。自分の意思です。
課長を見ていたら私も走りたくなって……」

「そうか。それならいい。歓迎する」

少し心配しながらもフッと笑ってくれた。
そして課長は、ポンッと私の頭を撫でてきた。
えっ……?
心臓がドキッと高鳴った。

笑った……!?
初めて課長の笑う姿を見てしまった。
どうしよう……。
何だか胸がキュンとなってしまう。 

「アハハッ……それは、嬉しいな。
これからよろしく頼むよ!」

篠原さんは、笑いながらそう言って
私を歓迎してくれた。
勢いで入会したいと申し込んじゃった。
上手く走れるだろうか?私の中に少し不安はあった。

それから課長と篠原さんと挨拶して別れる。
綾音と待ち合わせすると
帰りに入会することを話した。

「えっ?結衣。
陸上の方で入会することにしたの!?」

「……うん。ブランクや怪我もあるから
上手く走れるか分からないけど……」

「えーいいじゃない。
そうか~やっと陸上する気になったんだ!!
結衣。部活辞めてから塞ぎ込んでいたもんね。良かった」