ギクッ!!
何故私の考えていることが分かったのかしら?
「えっと……それは……」
図星を言われてどう返事を出したらいいか悩んだ。
だって事実だし……。
すると篠原さんがクスクスと笑う。
「まぁまぁいいではないか。夢があって。
二階堂さん。確かに義足で、それだけの
記録を出そうとするのは、現在だと無理かもしれない。
だが……彼は、それを諦めていない。
今は、義足も最新のモノに生まれ変わってきている。
彼の才能ならもしかしたら……いつの日か
叶う日が来るかもしれないよ」と言ってきた。
でもそんな日が……本当に来るのだろうか?
夢のまた夢のような気がする。
現実味のない夢に私は、少し呆れてしまった。
「それにしても。今の記録を見ても
これなら次のパラリンピックの選手に
選ばれる記録だぞ。
日向君は、本当にもう選手として出場しない気か?」
えっ?パラリンピック選手に選ばれるなんて
名誉なことなのに。どうして走ろうとしないの!?
出ればいいのに……せっかくなんだし。
私は、不思議に思っていると課長は、
深いため息を吐いた。
「選手としては、もうすでに引退しています」
「どうしてですか!?」
私は、思わず口に出してしまった。
だって勿体ない……。
「言っただろ?あくまでもパラリンピックは、通過点だと。
俺の目標は、自分の自己ベストを抜くことだ。
国内の小さな大会なら出てるし
記録を抜くことなら選手ではなくても出来る。
それに……引退をしたのだって
年もあるが課長に就任して忙しくなったからだ。
そうではなくも上司が障がい者だと舐められやすい。
きちんと仕切るには、中途半端なやり方ではダメだ」
ハッキリした口調でそう言ってくるではないか。
私は、それを聞いて。なんて、ストイックで
真面目な性格なのだろうかと思った。
人に厳しいだけではなく、自分にもとても厳しい。
けして自分も甘やかさない。
課長が堂々としていて自信に溢れているのは、
自意識過剰ではなくて、それだけの
高い目標があって努力しているからなんだ。
私は、課長に対しての見方が少しずつ変わっていく。
凄いなぁ……。
「それよりも……お前は、どうなんだ?
体験入会にしろ、そろそろ決めないといけないだろ。
俺としては」
「あ、あの……入会させて下さい!!」