「アハハッ……すまない。ついね。
彼女があまりにも君と似た表情をするから」
「二階堂と……俺がですか?」
どこが?と眉を寄せる課長。
そんな嫌そうな顔をしないで下さいよ……。
私だって似ていると言われて複雑なんですから。
そもそもそこまで似ているとは思えない。
「アハハッ……君と二階堂さんだったかな?
走るのが好きなのだろう。そこが
よく似ていると思ったんだよ」
私が走るのが……好き?
「そんなのここに来ている奴らは、皆そうですよ。
二階堂。上層部は、知っているがその事は、
言いふらすなよ?俺が走ってるのも含めてだ」
「何でですか!?」
そんな凄い人なのに何で言わないのだろうか?
知れば、皆の見る目が変わるのに。
謙虚になっているのかしら?
「俺は、別に自慢したくてやっている訳ではない。
それに中途半端な状態で騒がれても迷惑なだけだ」
中途半端……?
これの何処が中途半端だと言うのだろうか?
むしろストイックで妥協していないぐらいなのに。
意味が分からないと首を傾げると
篠原さんは、それを見てクスクスと笑う。
すると課長は、ハァッとため息を吐いてきた。
「俺の最大の目標は、インターハイで
出した自己最高記録だ。
パラリンピックは、あくまでもその通過点に過ぎない」
えぇっ!?
インターハイで出した自己最高記録?
いやいや、無理でしょう。
いくらなんでも……。
義足で、それだけの記録を出せるとは思えない。
私は、課長の無理な目標に唖然とした。
「お前……今、無理だと思っただろう?」