「それで、何処に行く予定なんだ?
お前らに任せるが……」
課長がデートする場所を尋ねた。
私も気になる……。
場所は、何処にしたのかしら?
「近場で何ですが……ぜひ僕のいつも行く場所に
案内したくて計画を立てました。
一緒に行きましょう」
ニコニコしながらそう言ってきた。いつも行く場所?
視覚障害のある松岡さんは、一体
いつも何処に行っているのだろうか?
私は、不思議に思いながらWデートをすることになった。
とりあえず移動をすることに。
松岡さんは、歩くのに杖を使って少しずつ
移動して行くのだが杖を上手に使い
前に物や人が居ないか確認をしながら
その際には、夏美さんの腕を持ち指示に従っていた。
「松岡さん。2歩先、前方に階段あります」
駅の階段では、夏美さんが教えてあげると
松岡さんは、杖でそれを確認。
そして、言われた通りに階段を上がって行く。
私は、それを見ていて改めて視覚障害の大変さを知った。
当たり前に上がっている階段であっても
松岡さんにとったら、それを目で確認することは出来ない。
杖や指示に従わないと上がるのも困難なのだ。
真っ暗の中でやるのだから
恐怖と危険との隣り合わせだ。
指示を出すにしても、きちんと正確に伝えないと
危ない目に遭ってしまうかもしれない。
しかし夏美さんは、慣れた様子で
松岡さんに合わせて教えてあげていた。
凄い……指示も的確だわ。
「夏美さん。慣れているのですか?」
「えっ?はい。
たまに大学帰りに駅で見かけるので」
「僕、電車通勤なんです」
えっ?そうなんだ?
陸上以外で共通点があったのね。
すると課長が呆れたように松岡さんに
「しかし前から思っていたが、なぜ弟に頼まないんだ?
頼めば送り迎えの車ぐらい用意してくれただろ?」と
聞いてきた。