「何だ?これ……?」
「これは、これからの翼君に必要だと思ってな。
源さん……友人に頼んで貰ってきた。
約束しただろ?俺が翼君との架け橋になるって」
封筒の中身を開けると
それは……車椅子バスケの案内パンフレットだった。
「車椅子バスケ……?」
翼君は、不思議そうにパンフレットを見ていた。
車椅子バスケって……課長。
いつの間にそんな物を用意したのかしら!?
私も知らなかった。
「これなら、脚が悪くても出来る。
一度見学に行くといい。お前の人生に
影響を与えるものになるかも知れないぞ」
「うん。」
翼君は、初めて笑顔を見せてくれた。
彼の中に何かが変わろうとしていた。
しかし、のちに本当に課長が翼君の架け橋に
なったことは、この時私は、想像していなかった。
数年後には翼君は、車椅子バスケで
日本を代表する期待のエース。
櫻井翼選手として活躍することになる。
そしてパラリンピックに出場して
車椅子バスケを金メダルまで導いて行く。
その事をまったく知らない私は、
呑気に課長と一緒に病院を後にしていた。
「亮平さんたら、いつの間に
そんなのを用意していたのですか?
私知りませんでしたよ……」
もう教えてくれても良かったのに。
私は、ムスッと頬を膨らましていた。
「わざわざ、まだやるって決まってもいないのに
報告をする必要がないと思っただけだ。
やるかどうか決めるかは、翼君自身が決める」
さらりと課長は、そう言ってきた。
そりゃあ、そうだけど……。
少しは、教えてくれてもいいのにな。
「ほら、お前にもいいものを持って来たから膨れるな」
そう言うと課長は、自分のカバンから
何かを取り出して私に見せてきた。
これは……!?