何とも凄い筋肉だろうか。
タンクトップになっても分かるぐらいに
無駄のない、しなやかで鍛え上げられた肉体。
スポーツをしていた人の身体だった。
凄い……こんな筋肉質な人なかなか居ないわ。
私は、思わず見惚れてしまう。
課長は、そのまま何も言わずにスタート地点に行く。
本当で走る気かしら!?
私は、驚いていると篠原さんが
「よく見ておくといいよ。彼は、
天才ランナーだから」と言ってきた。
天才ランナー?課長が……?
不思議に思っていたら準備が出来た課長は、
手を挙げた。篠原さんは、ストップウォッチを
片手に持ちゴール近くまで行く。
私もそれについて行くことにした。
距離から行くと100メートルぐらいだ。
そして篠原さんの合図と共に課長が走り出した。
私は、その走り方に驚かされた。
なんて……綺麗にフォームだろうか。
姿勢も手の振り方も完璧。だがそれだけではない。
義足をつけている人と思えないぐらい速い。
ううん。健常者の中でも並の陸上選手より
明らかに速かった。
風を切るように軽やかにスピードを上げて行く課長。
まるで……魔法にかかったかのような
一瞬の出来事だった。
息をするのを忘れてしまうほど見惚れていたら
課長は、あっという間にゴールをしてしまった。
ハッと我に返る私。
篠原さんは、ストップウォッチを止めながら
「おっ……なかなかいいタイムだぞ。10秒98だ」
えぇっ!?
課長って……そんなに足が速かったの?
しかし課長は、ため息を吐いた。
「ハァッ……全然ダメですね。出足が遅かった。
もう一回お願いします」
納得していないのか、もう一度走りたいと
要求してくる。
いや、十分速いと思いますけど……。
「アハハッ……相変わらずストイックだね。
よし。なら今度は、出足を意識して走ってくれ」
課長は、返事をすると息を整えながら
スタート地点に戻って行く。
それからも何度か走り続けた。