何だか痛々しい姿に障がい者なんだなぁ……と思った。
そしてスポーツクラブ内にある陸上用のトラックに
入って行くとたくさんの会員が陸上の練習をしていた。
久しぶりに見るグランドに胸がドキドキと高鳴ってきた。

「ウォーミングアップ終わったかな?日向君」

「はい。今終わりました」

声をかけてきたのは、中年のインストラクターの人だった。
課長がそう返事をするとインストラクターの人は、
私に気づいた。

「あれ?その子は?」

「俺の働いている会社の部下です。
今日体験入会で見学しに来たみたいなんですが
ちょっと見学させてやってもいいですか?」

私の代わりに説明をしてくれる課長。
あれ?よく見るとインストラクターの人も
課長と同じ義足だった。この人も……?

「あの……二階堂結衣です。よろしくお願いします」

「よろしく。私は、インストラクターの篠原だ。
日向君の部下か……なんだ彼女かと思ったぞ。
部下なら君も大変だね。
彼は、生真面目だから厳しいだろ?」

あ、それは……もう。
自己紹介するとそう言われたので
はいと言いたかったが隣に課長が居るので
グッと心の中に止めておく。
そんなことを言った日には、恐ろしくて
口に出して言えないわ。

「篠原コーチ……」

課長は、少し困った表情をしていた。

「アハハッ……冗談だ。それより
せっかくなら君の走りを見せてやったらどうだ?
可愛い部下にいいところを見せたいだろ」

可愛い部下……私が?
すると課長は、ため息を吐くとジャージを脱ぎ出した。
その姿に思わずドキッとした。