「何でですか!?
亮平さん達だって日本代表として行くのに」

そんなの納得がいかない。
不公平だと言うと課長は、箸を止めた。

「世間は、そうは見ない。
オリンピックは、世界の強者ばかりが集まるし
有名選手も多いから注目は、されやすい。
しかし俺達は、ハンデをそれぞれ持っている。
だから世間から見たらハンデがある分
走るのが遅いだの、つまらないだろうと勝手な先入観や
偏見で期待が半分ぐらいしか持たれない」

「その上にパラリンピックは、
オリンピックの後にやるから
どうしても大会が終わったと思われやすい。
そうなれば、オリンピックの受賞者や有名選手の
インタビューやその後の期待に向いてしまう。
それが世間の流れてって言う奴だ」

課長は、冷静に分析をした。
私は、それを聞いて悲しくなった。
自分もそうだったから
余計に罪悪感と申し訳なさがあって悲しかった。
皆……同じなのに。

「でも、皆……凄かったです。私……リアルで見たの
初めてだったけど感動をしました。だから
皆に見てもらえないのが勿体ないと思います」

これを私が言っていいのか分からないけど
でも正直に思ったことだ。
上手く伝えられなくて涙が溢れそうになった。
すると課長は、優しく私の頭を撫でてくれた。

「……お前の気持ちが俺らにとったら
最高の褒め言葉だ。ありがとう」

そうお礼を言って笑いかけてくれた。
えっ……?
意味が分からずに私は、きょとんとする。

「俺達は、注目されたくてやっている訳ではない。
そりゃあ、たくさんの人に応援してもらえたら嬉しいし
金メダルを取るために今まで頑張ってきたが
同じハンデを持っている人達に勇気を与えるためだ。
自分達が勇気を貰ったように他の人にも
俺達の活躍を見て一歩を踏み出す勇気。
苦痛ばかりではない。
障害があることは、けして人生の終わりではないって
皆に見てもらうための舞台だ!」

「それだけではない。
周りの人達にも自分の活躍を見てもらうことで
感謝と成長を伝えるためでもある。
分からない奴には、俺達が活躍して分からせればいい。
自分をアピール出来る最高の舞台にすればいい」

そう話す課長の目は、自信と期待で満ち溢れていた。
相変わらずストイックだった。
そして誰よりも真っ直ぐでカッコいいと思った。

「亮平さん……」

「結衣みたいに俺達を理解して
応援してくれる人が居ることが励みになる。
だからこそ、やりがいを感じるってもんだ。
お前は、そのままでいろ」

そう言いながらまた、頭を撫でてくれた。
優しくてあたたかい手。
私も知らない間に勇気を貰っていた。