「おい来たぞ！」

「やっぱり今日も可愛いな〜」

「そりゃ学校一の美少女だもんね」
　
学校へ向かういつも通りの朝、私に向けられた数々の言葉が頭の中を激しく駆け巡っていった。

早くこの場所から去りたい気持ちになり、私は恥ずかしく頬を赤くしながら顔を伏せた。

「だってよ千花」

「今日も変わらず朝からモテモテだな」
　
そんな私の側では親友二人、坂下夢乃(さかしたゆめの)と、橘乙葉(たちばなおとは)が周りに目を配りながら言ってくる。

そんな二人に挟まれた私は、軽く顔を上げて声を小さくして言う。

「や、やめてよ……ただでさえ人見知りなんだから」
　
今日は夢乃と乙葉が居てくれるから、隠れながら登校しないで済んでいるのだ。

いつも一人だと人集りが出来ちゃって、学校に行くどころではなくなってしまう。

そのせいで学校へはほぼ遅刻同然な感じで登校してしまっている……。

どうにかしなくちゃとは思っているけど、なかなか上手くいくものではない。

人見知りの私からしたら、まずは勇気を一歩踏み出させねばならないのだ。

その勇気を一歩踏み出されば、ここまで苦労する事もないだろうにと密かに思っているけど、実行する勇気も出せないのもまた事実である。