「いーて、いーて。俺も原因なんだし。
むしろ悪かったね。アイツに怒らす原因作って」
「いえ……とんでもないです。
私が情けないばかりで、担当を外されないだけ
マシだと思います」
自分でも外されないことが不思議である。
こんなに失敗ばかりなのに……。
考えただけでも落ち込みそうなる。すると
それを見た浜野さんは、
「いや、アイツは、外さないと思うぞ?
涼花ちゃん気に入られているから」と言ってきた。
「えっ?どういうことですか?」
気に入られてる?
呆れているの間違いではないかしら?
現に毎回先生を怒らせている……。
「アイツはさ……昔から自分のテリトリーに
入られるのを嫌うんだよ。例え編集者でも
女なら部屋に入れない。まぁ、男でもだけど
勘違いされたら困るのと睦月も居るから余計に
警戒心が強くなっているのだろう。
睦月に悪い影響を受けさせたら嫌だしね。だから
当たり前のように部屋に入れる涼花ちゃんは、
気に入られていると思うよ!」
自分のテリトリーに……?
私が……先生に気に入られているの?
まさか……でもそうだったらいいのに。
「でも……同情とかでは?」
「アハハッ……アイツが、同情で部屋に入れないし
優しくしないよ。ハッキリした性格だし。
俺だって合鍵を貰うのに苦労したんだし
もっと自信持ちなよ?でもさ~藤崎もやっと春が来たか?
いつまでも沙織ちゃんを引きずっているから
心配してたんだよな」
浜野さんは、うんうんと納得していた。
その言葉にドキッとした。そして先生の奥さんの名前に
胸がズキッと痛んだ。
「あの…沙織さんと先生ってどんな感じの
夫婦だったんですか?」
聞きたい…どんな夫婦だったのか。
お似合いの夫婦だったに違いないだろうけど
どうしても知りたい。