「あ、睦月君。起きた?」

私が声をかけると寝ぼけているのか
不思議そうに首を傾げてきた。
どうしてここに居るのだろう?と思ったのかもしれない。

「パンケーキ食べた後に眠っちゃったんだよ」

ニコッと笑顔で言うと睦月君は、コクリと頷いた。
ベッドから飛び降りると私の所に駆け寄ってきた。
クスッと笑うとタンスに服をしまう。
ある写真が目に映った。

あ、睦月君の赤ちゃんの頃の写真だ!!
可愛い~今よりも小さくて。
赤ちゃんの頃から美形だったんだ。
するとある写真にも目に映った。
綺麗な女性が赤ちゃんの睦月君を抱っこしていた。
しかも隣には、先生が寄り添って写っていた。

幸せそうに微笑みながら先生は、こんな風に笑うんだ?
奥さんは、結んだ髪を横にたらし優しく
上品な雰囲気の女性だった。
この人が先生が選んだ人で睦月君の母親。

……敵わない。
こんな美人で上品な女性が選ばれるのは当然。
そして睦月君の…。
ズキッと胸が痛んだ。私は、こんな人に敵わないと思った。
しゅんと落ち込んでいると睦月君は、
ツンツンと服の裾を引っ張ってきた。

「睦月君……?」

すると手を広げてきた。
えっ?と思ったが抱っこを願っているようだった。
まさか、また睦月君に抱っこをねだってくれるとは、
思わなかったけど嬉しかった。

よいしょっと抱き上げるとムギュッとくっついてきた。
もしかして、励ましてくれようとしてるの?
私もギュッと強く抱き締め返した。
小さな身体なのに何だかあたたかくて優しい。
しばらくして抱っこしたまま部屋を出ると先生も
部屋から出てきた。

「あ、先生……」

奥さんの事を思い出し
またズキッと胸が痛みだした。すると睦月君は、
先生にも手を伸ばしてきた。

「うん?なんだ……。
俺にも抱っこして欲しいのか?」

先生は、ひょいと私から睦月君を受け取り抱き上げた。
ムギュッと抱きついていた。
あ、行っちゃった……。

何だか手が離れると寂しくなる。
先生は、睦月君の背中をポンポンとあやしながら
「コイツが、俺以外で抱っこをねだるなんて珍しいな。
小野木…相当気に入られたようだな?」と言ってきた。