「あの……いいのでしょうか?
自分の分は、払います」
「いらん。それよりさっさと帰るぞ
時間も時間だし、執筆だってしてぇ…」
先生は、ハァッとため息を吐くが不機嫌そうだった。
気分を害してしまったのだろう。
私は、しゅんと落ち込みながらも睦月君と
手を繋ごうとすると睦月君は、先生の所に寄って行く。
そして、先生の服を引っ張った。睦月君!?
「どうした?」
すると手を広げ抱っこをねだってきた。
睦月君……こんな時に!?
「ったく、抱っこかよ」
不機嫌ながらも先生は、ひょいと抱き上げた。
抱っこすると睦月君は、ギュッとしがみついていた。
すると一瞬だが、先生の表情が柔らかくなった。
ポンポンと背中をあやしながら
「帰るぞ。小野木」
「は、はい!!」
慌てて返事する。気のせい?
一緒に歩きながらチラッと見ると機嫌は、
元に戻っていた。もしかして
睦月君は、先生の機嫌を直させるために
抱っこをねだったのかしら?
ありえる……私の時もそうだったし
私は、チラッと睦月君を確かめるとスヤスヤと
眠っていた。あ、ただ眠たかったから抱っこして
欲しかっただけか……。どうやら違ったみたいだ。
でも、そういう人の感情に敏感そうな気がする。
勘が良さそうだし…。
睦月君を見つめながら歩いて帰った。
自宅マンションに着くと睦月君をベッドに
寝かせ先生は、部屋に籠り執筆を始めていた。
私は、とりあえず洗濯物をたたむことにした。
たたみ終わると睦月君の洗濯物を持って部屋に行く。
先生のは、邪魔になるから後で渡そう。
それより、せっかくだから夕食を作りたい。
でも、お腹いっぱいだし……献立が浮かんで来ない。
どうしようかな?
そうブツブツと言いながら睦月君の部屋に入ると丁度
目を覚ましたところだった。
ムクッと起き上がるとあくびをしながら目を擦る。