「おい、睦月。もう帰るのか?
あれ…このおばちゃん誰?」
おばちゃん!?
まだ、そんな年では……。
いや…幼稚園児の子にしたら確かにおばちゃんなのかも
知れないけど。でもさすがに傷つく。
困惑するが、そのままだといけないので
「私は、睦月君のパパの仕事関係で
睦月君を迎えに来たの」と言って教えた。
「ふ~ん。そうなのか?」
男の子がチラッと横に居る睦月君を見ると睦月君は、
コクリと頷いていた。どうやら確認したようだった。
すると睦月君は、黙ったまま園内に入って行く。
「睦月君?」
「カバンと上着を取りに行ったんだよ…アイツ。
ねぇ、おばちゃん。 もしかしたら
河合おじちゃんの代わりの人?」
男の子がそう尋ねてきた。
またおばちゃんと繰り返して言われてしまった。
地味に傷つく……。
「えぇ、そうよ。河合おじちゃんは、
会社の先輩だから、その代役に私が来たのよ。
睦月君と仲いいのね。えっと…お名前は?」
「俺は、金本拓馬。
睦月の親友……あ、おばちゃん。
睦月。アイツ無口で大人しいけど
面白くていい奴だからおばちゃん泣かすなよ?」
その子に指摘をされる。
おばちゃん連呼に幼稚園児の子に指摘をされてしまった。
何だかちょっと…いや、かなり傷つく。
ちょっと生意気な男の子は、金本拓馬君というらしい。
「う、うん…」
返事をするとしばらくしてから睦月君が戻ってきた。
拓馬君の言った通りカバンと制服の上着などを取りに
行っていたようだった。
「じゃあ睦月。また明日。幼稚園でな」
拓馬君が言うと睦月君は、コクリと頷き手を振っていた。
どうやら本当に仲がいいみたいだ。見ていても分かる。
睦月君は、無口だけどいい友人に恵まれているようだ。
私は、睦月君と手を繋いで帰る事にした。