翔馬君……そんな風に言わないで。
余計に別れたくないと思ってしまうから
涙が溢れそうになる。すると翔馬君は、そのまま話し続けた。
「でもさ……俺は、それを最後にしたくない。
例え菜乃が東京に戻ったとしても毎日電話するし
メールだって知る。会いに行けたら会いに行く。
俺……こんな足だけど出来ないからって
諦めたくないんだ。だからさ
お前も遠距離になるからって諦めるなよな。
一緒にまた来年も花火大会に来ようぜ!」
翔馬君は、また来年も一緒に見ようと言ってくれた。
最後じゃないから……遠距離でも諦めないって
ハッキリと私に言ってくれた。
それは、涙に出るほど嬉しい言葉だった。
私も……諦めたくない。
ずっと、ずっとこの街に居たい。
翔馬君と離れ離れになるのは……嫌だよ。
「私は……翔馬君と一緒に居たい。
これからも……だから帰りたくない」
涙を流しながらやっと自分の口から翔馬君に言えた。
自分の気持ちに素直になれた。
それは、翔馬君のお陰だ。彼は、いつも私の背中を押し
大丈夫だと言ってくれる。勇気をくれる。
「だったら説得しようぜ?親にさ
まだ帰りたくないって、ここに居たいって」
「うん……うん。」
私は、泣きながら必死に頷いた。
もう涙で視界が見えない。花火どころではない。
そんな2人の姿を叔父さんや美紀子さんは、
優しく何も言わずに見守ってくれた。
結局。後半は、花火どころではなく
ただ泣いていただけの花火大会になってしまった。
でも後悔なんてしていない。
花火なんて来年も見ればいいし、何より
両親に私の気持ちをぶつけてみようと思ったからだ。
反対をされるかもしれない。
連れ戻されるかもしれない。でも諦めたくない。
やっと自分で見つけた居場所だから……。
私は、帰ってから勇気を出してお母さんが居る自宅に
電話をしてみた。夜も遅かったが
決意を揺らがないためにも早く電話した方がいいと
自分で思ったからだ。
「どうしたの?こんな時間に……?」
「あのね……お母さん」