「ほら、菜乃分。言っておくけどな。
落ち込むのは、俺の方だからな。好きな奴の前で
おんぶされているとか……生き恥だわ」
頬を染めながらそう言ってくる翔馬君。
自分の方が恥ずかしいとか落ち込むとか言ってくる
翔馬君に私は、少し驚いたが嬉しかった。
励まそうとしてくれたのだろう。
「ほら、食べろ。
花火やるまで腹ごしらえをしようぜ」
「うん。」
私は、返事をすると翔馬君と一緒に
焼きそばとかき氷を食べた。
焼きそばは、たくさん作るからか美味しいし
かき氷も暑い時に食べるとさらに冷たくて美味しかった。
しばらく食べたり、話をしていると辺りも暗くなり
花火が打ち上げ始めた。
ドンッと高く上がると大輪の花のように大きく咲いた。
なんて綺麗だろうか……。
それからもたくさんの花火が打ち上げて行く。
小さな花火……そして大きな花火。
どれも凄く綺麗でテンションが上がってしまう。
スマホでも撮れないかしら?
いや。このスマホだと周りが暗くなっちゃうか。
ブツブツと考えていたら横に居る翔馬くんを見る。
夜で薄暗いけど、花火が上がる時に辺りが一瞬
明るくなるので翔馬君の横顔が見えた。
目をキラキラさせながら花火を見ていた。
少年のように夢中で見る翔馬君は、少年のようで
とても可愛らしかった。
花火をそっちのけでジッと翔馬君を見ていると
気づかれて目が合ってしまった。
「どうしたんだよ?」
「えっ……ううん。何でもない」
私は、慌てて否定して花火を見直した。
心臓がドキドキと高鳴っていた。
気づかれちゃったかな……私がずっと見ていたの。
だとしたらかなり恥ずかしい。さらにドキドキする。
すると翔馬君は、私の手を繋いできた。
私は、驚いて翔馬君を見た。
「翔馬君……?」
「菜乃……俺さ。お前に会えて良かった。
叔父さんの跡を継いでケーキ屋になりたいとか
プロの車椅子バスケ選手になりたいとか夢はあるけど
恋とかよく分からなかったし半分諦めていた。
でもさ。菜乃が来てから恋とか色々知って
すげぇ楽しかった……だからありがとな」
ニコッと笑いながら言う翔馬君に胸がギュッと
締め付けられそうになった。
まるで最後のお別れみたいな挨拶だったからだ。
凄く切ない気持ちになっていく。