どうやらお客さんは、知り合いのようだ。
笑顔で受け取ると帰って行った。
凄い……。

私は、驚きと共に感心していた。
普段からお手伝いをしているせいか
車椅子なのにきちんと手伝いが出来ている。
すると翔馬君の叔父さんの奥さん
美紀子さんって人が救急箱を持って現れた。

「お待たせ。足を見せてごらん?」

「あ、あの……すみません」

「フフっ……いいのよ。これぐらい。
あら、派手に転んだわね」

擦りむいた足を見せると美紀子さんは、クスッと笑う。
そして救急箱からガーゼと消毒液を取り出すと
ガーゼに消毒液をつけた。

そして傷口を消毒してくれた。
染みて痛かったけど何だか嬉しかった。
絆創膏を貼ってもらうと翔馬君がお冷やとおしぼりを
トレーに乗せて左手に持つと右手で車椅子を押しながら
こちらに来た。

「はい。終わり」

「あ、ありがとうございます」

「終わったか?菜乃。
ほら。せっかくだからケーキ食ってけよ!
ここのケーキは、ショートやチョコとか旨いのが
たくさんあるぞ」

翔馬君は、お冷やを私の座っている
テーブルに置きながらそう言ってきた。
ケーキか……確かにどれも美味しそうだった。

「もちろん。ここのおごりで」

「あ、こら。またあんたは……勝手に」

「いいじゃん。俺の客なんだし」

美紀子さんは、呆れていたが
翔馬君は、笑っていた。いやいや。
さすがにおごってもらう訳にはいかない。
冗談かもしれないが気が引けるし……。