「あ、あの……」

「この前は、ごめんなさい。キツいことを言って……」

えっ?挨拶する前に謝られてしまった。
まさか謝られるなんて思ってもみなかったから
驚いてしまった。
それに翔馬君のお母さんが悪い訳ではないのに。
私は、慌てて止めた。

「あ、謝らないで下さい。
心配するのは、当然ですし……」

「翔馬に言われたわ。
『俺は、好きな女を守れないほど弱くない。
傷つくなら全力でぶつかってからする』って
私は、母親なのに……あの子を幼くて弱いと
勝手に決めつけて勘違いしていたわ。
まさか……好きな子をあの子なりに必死に
守ろうとしているのだもの。だから……ごめんなさい。
息子のことをこれからもよろしくお願いします」

「あ、こちらこそ。よろしくお願いします」

私も慌てて頭を下げた。そうなんだ。
翔馬君は、そんな風にお母さんに言ってくれたんだ。
好きな子を守れたいほど弱くない……か。
翔馬君らしい。何より優しくてあたたかい。
私は、嬉しくなった。

そして私は、そのまま病院を出て駅に向かった。
歩いていても電車に乗っていても嬉しくて
顔が緩みっぱなしだ。
きっと変な子だと周りが思っているかもしれない。
それでも嬉しい気持ちが大きかった。

岐阜駅に着いて降りると急いでショコラに戻った。
お店の中に入ると美紀子さんがテーブルの上を
片付けていた。私は、美紀子さんが気づいて
何かを言う前に思わず胸に飛び込んでしまった。

「あらあら。お帰りなさい菜乃ちゃん。
どうだった?お店は……何だか嬉しそうね?」

「無事に行ってきました。そうしたら
翔馬君がお母さんに言ってくれていて
だから……あの……」

必死に全部話そうとするのが
言葉が上手くまとまらない。上手く伝えられないでいた。
すると美紀子さんは、クスクスと笑われてしまった。

「はいはい。取り合えず落ち着こうか?
菜乃ちゃん。美味しいアイスミルクティーでも
作ってあげるから」

そして本当にアイスミルクティーを作ってもらい
私は、あったことを説明した。
美紀子さん達は、それをうんうんと優しい
眼差しで聞いてくれた。