その人は、笑いながらそうやり取りをしていた。
そして私の方を見ると苦笑いしていた。
私も思わず笑ってしまった。意外と私と似て
ドジなのかもしれない。お陰で緊張が少し和らいだ。
次のエレベーターに乗ると今度は、無事に
4階に着いた。私は、その人と別れると
翔馬君に居る病室に向かった。
病室のところまで来るとまた緊張してきた。
大丈夫。そう言い聞かせながら勇気を出して
ドアをノックした。
「はい。」
「あの……菜乃です」
聞こえた声は、翔馬君だった。
声からしても元気そうだった。
もしかして熱が下がったのかな?
「あ、菜乃!?入れよ……今、大丈夫だから」
翔馬君の元気な声が聞こえてきた。
良かった……元気そうだ。
私は、失礼しますと言い恐る恐るドアを開けた。
すると翔馬君がベッドの上で起き上がっていた。
顔色も良さそうだし私を見るとニカッと笑ってくれた。
「良かった……もうお見舞いに来てくれないのかと思った」
「えっ……?」
「母さんから聞いた。悪かったな?
母さんも酷いことを言ってしまったと気にしてた」
あ……そうなんだ?
翔馬君のお母さんは、私のことを翔馬君に話したんだ。
それに気にしてくれていたんだ……。
自分も気にしていたから申し訳ない気持ちになる。
翔馬君のお母さんが悪い訳ではないのに……。
「菜乃。ちょっとこっち来て」
「えっ?」
翔馬君に、こっちに来いと言われるので
私は、言われた通りに徐に近付いて行く。そばまで行くと
翔馬君は、私の手をギュッと握ってきた。
えっ……?
急に手を握ってきたため胸がドキッと高鳴る。
「母親は、あぁ言ったけど俺は、最初から
諦める気はないから。何もやらない内に
諦めるなんてしたくない。こんな頼りない俺だけど
菜乃とこれからもずっと一緒に居たいと思っている。
だからお前も諦めるなよ。好きだ。
俺と付き合ってほしい」