ずっと抱えていた苦しみ。
やっと本当の意味で理解してくれる人が現れた。
それは、きっと翔馬君も辛い過去を経験したからだろう。
「あらあら。翔馬君ったら
女の子を泣かしちゃって。いけたい子ね」
「だ、だから違うって……」
美紀子さんの言葉に慌てて否定していた。
頬がほんのり赤かった。
美紀子さんは、クスクスと笑いながらハンカチを
出して貸してくれた。
「冗談よ。でも菜乃ちゃん。忘れないで。
あなたは、誰のものでもない。
菜乃ちゃんの好きなようにすればいいと思うわ」
「はい……」
「ありがとう……ございます」
借りたハンカチで拭いていると
翔馬君は、頭をかきながら何やら考えて込んでいた。
そしてハッと思い付いたように
「えっと……俺かお前に前を向けるように
願掛けしてやるよ!
今週の日曜日に車椅子バスケの試合があるんだ。
それに勝てたらきっとお前にも
勇気や前を向くきっかけになると思うし」と
そう言ってくれた。
願掛け……?
翔馬君が私のために……?
またもや思わない発言に驚いてしまった。
「本当……?」
「あぁ、男に二言はない」
恥ずかしそうに頬を染めながら
はっきりと言ってくれた。
私のために大会で優勝すると言ってくれた。
それがまた私には、嬉しかった。
「うん。ありがとう……」