「あ、でも言いたくないなら
無理して言う必要ないからな?
俺だってあるし……そういう嫌なやつとかさ」
ボリボリと頬をかきながらそう言ってきた。
翔馬君は、明らかに気づいていた。
私が学校で何か遭ったこと……。
どうしよう。だが、この調子だとバレるのも
時間の問題だと思った。それに……もしかしたら
翔馬君なら受け入れてくれるかもしれない。
そんな淡い期待をする自分も居た。何故か分からないけど
「あ、あのね……私。
学校でイジメに遭っていたの」
私は、勇気を出して口に出してみた。
イジメを話すのは、震えるような怖さがあった。
否定されないことを祈るばかりだ。
「えっ……?」
「友達の好きな人が私に告白をしてきて
あ、でも断ったのだけど。
でも……友達は、それが許せなかったみたいで
それ以来クラスの女子に無視されるようになって。
登校拒否になっちゃったんだ……、
自分でも情けないとは思う。でも、行けなくて
そんな時に祖母に遊びに来ないか?と誘われて
ここに来たの」
本当は、話すはずではなかった。
死ぬほど恥ずかしい。
なのに自分から話すことが出来た。
後は、彼がどう思ったかだ……。
すると翔馬君は、黙って聞いていて何も言わなかった。
あれ?もしかして引かれた……?
しかしその時だった。
「はぁっー?何だそれ!?
いくら好きな奴が菜乃に告白したからって
何で他人を巻き込んで無視するんだ?
意味分からねぇ……そんな自己中な奴だから
好きにならなかったんじゃないのか?おい……」
翔馬君は、一気に思ったことを吐き出してきた。
よほど腹が立ったのだろう。
怒りが収まらない翔馬君を見て私は、唖然とした。
「で、でも……友達は、
本当に好きだったみたいで……」
「好きなら何しても許されると思うのは、
そもそもの間違いだろ?悔しかったのなら分かるが
イジメていい理由にはならん。
大体それで菜乃を苦しめているんだぞ?
それに対して何も思わないとかありえねぇ……」
バッサリと切り捨てた。私は、その言葉に
唖然とするが徐々に嬉しさが込み上げてきた。
翔馬君が真由香の態度やイジメに対して
怒ってくれたこと。私の代弁してくれたこと。
否定をせずに受け入れてくれたことが嬉しかった。