「チョコケーキと……ホットのミルクティー」

私がメニュー表を見ながら慌てて言うと
翔馬君は、スラスラと手慣れたように
伝票に書いていく。それをニコニコしながら
美紀子さんと祐一郎叔父さんは見ていた。

「じゃあ、用意するから」

翔馬君は、照れているのか
さっさと車椅子を押しながら行ってしまった。
あ、行っちゃった……。
もしかして迷惑だっただろうか?
照れていたとしても彼女だと思われるのは、
嫌な場合はあるし……。

「あらあら。照れちゃって可愛いこと……。
いつもそうなのよね。あの子……照れ屋だから」

「アハハッ……まったくだ!」

豪快に祐一郎叔父さんが笑うと厨房の方に戻って行く。
やっぱり照れているんだ……。
しかも普段ならそうなら良かった。
考えすぎだと知りちょっとホッとした。

「えっと……菜乃ちゃんだっけ?
きっかけは、転んだからせいかも知れないけど。
あの子は、いい子だからこれからも仲良くしてやってね?」

美紀子さんは、クスッと笑うと私にそう言ってきた。
仲良くとか言うほどまだ、親しくはないが
いい人なのは、見て分かった。
気さくで話しやすい。そして優しいと思った。
それは、美紀子さん達も同じだけど……。

「はい……」

「美紀子おばさん。早く~」

「あ、はいはい。
じゃあ、ゆっくりして行ってね」

美紀子さんは、ニコッと笑うと行ってしまった。
車椅子の翔馬君の代わりに紅茶の入ったポットに
お湯を入れていた。そして用意されたチョコケーキは、
とても美味しそうだった。

「うわぁ~美味しそう」と思わず
声に出して言うと翔馬君は、クスッと笑った。
あ、笑われちゃった……。