そうなんだ……。
確かに小さな弟君が居ると静かに食べられないだろう。
クラスも皆の話し声でうるさいし
落ち着いた場所を探していたらココにたどり着いたのね。
なるほど……と1人で納得してしまった。

「お弁当は、菓子パンなんだね?」

「まぁな。朝は、朝飯作ったりチビ達をたたき起こして
飯を食べさせたりでバタバタしているから
弁当なんて作っている暇なんてねぇーよ。
今日だって下のチビが、ぐずるから学校まで
送り届けてすぐに来たし」

「送り届けたんだ!?いつもそんな感じなの?」

「大体は……。母親が居ないからしようがないだろ?
それより俺に何の用?」

「あ、ごめんなさい。用とかではないの。
あの……ただちょっと話してみたかっただけで
もう行くね?食事の途中にごめんね。じゃあ」

私は、慌ててその場から離れた。
あぁ、びっくりした。思わず逃げ出してしまったわ。
しかし……驚いた。
あんなところで食べているから。
ただちゃんとした理由があったようだ。

村瀬君の家は、母親が居ない父子家庭。
病気で亡くなったのか離婚か分からないけど
幼い弟君の面倒を見たり家事をやっているらしい。
だから朝も遅刻をしてきたんだ。大変そう……。

余計なお世話と思いながら同情してしまった。
しかし話すと不器用ながらもちゃんと答えてくれた。
恥ずかしくても無関心ではないようだ。
だとすると、もっと話しかけたら仲良くなれるかもしれない。
翔馬君の幼馴染みだし……仲良くなりたいなと思った。

それから私は、自分から話しかけるようにした。
最初は、戸惑って距離を置かれていたが
翔馬君関係の話を入れると話せるようになってきた。
周りは、女子と話すことに驚いていたが不器用だが
確かに根は、優しい。

「松嶋。今日も翔馬のところでバイトするのか?」

「うん。バイトの日だから」

「じゃあ翔馬とおばちゃん達に今日そっちに行くと
言っておいてくれ。今日下のチビの誕生日だから
チビ達連れてケーキ買いに行くからさ」

「分かった。翔馬君達に伝えておくね」