彼なりに挨拶をしてくれたのだろう。
挨拶してくれた……。
私は、思わず嬉しくなった。
心臓がドキドキしてもう少し仲良くなりたいと思った。

しかし、なかなか話せる機会はないし勇気もない。
お昼になるとまた席を外して何処かに行ってしまった。
どうやら彼は、一匹オオカミのようだ。
群れを嫌うのか友達と話すこともあまりしない。

「菜乃ちゃん。お昼一緒に食べようよ?」

「うん。いいよ。あ、でもその前に
お手洗いに行って来るね」

私は、仲良くなった子にお手洗いに行くと断り
クラスから出た。村瀬君が何処に向かったのか気になった。
廊下を見ると歩いているのが見えたから
こっそりと跡をつける。すると屋上の方の階段に向かい
そこの階段に座り出した。
私は、こっそりと覗くと持っていた小さな袋から
菓子パンを取り出してスマホをいじりながら食べ始めた。

どうやらいつもここで食べているのだろう。
何故そこで食べるのかしら?
クラスで食べたらいいのに……。
不思議に思いながら覗いていたら村瀬君と
目が合ってしまった。しまった!!
見すぎて前に出過ぎてしまったようだ。

「な、何やっているんだ?お前……」

「す、すみません……つい気になって」

どうしよう。跡をつけて覗いたのがバレてしまった。
言い訳も思いつかない……。
謝るべき?でも何故そこで食べるのか気になるし。

「あの……どうしてそこで食べるの?
クラスで食べないの?」

恐る恐る尋ねてみる。すると村瀬君は、
ギロッと睨み付けた後……またスマホの方に
目線を向けてしまった。
怒ったのかな?と思っていたら

「クラスは、うるさいからな。
昼飯ぐらい静かな場所で食いたいんだよ……」

「静かな場所で食べたいんだ……?」

「あぁ……家だとチビ達がうるさくて
ろくに静かに食べられないしな。
ここだと思う存分静かに食べられて寝られるし」