翌朝。


 私は猫賀御くんと決めた駅前の待ち合わせ場所へ向かった。


 昨夜、京香さんから「鬼目家の秘密」なる話を聞かされたせいで、いささか寝不足気味だ。


 霊力とか覚醒とか目覚めとか。


 自覚がないので半信半疑な状態だった。


 おまけに、猫賀御くんには気を付けるように、なんて───。


 なんかイヤだな………。


 猫賀御くんのこと、そんなふうに思いたくない。


 モヤモヤしたものが胸の中に広がっていく。


 ため息と欠伸を繰り返しながら歩いていると、

───ひゅッ、と冷たい空気を足元に感じた。


 風が吹いたのだと一瞬思った。


 でも何かが違う。


………風とは違う。


 立ち止まってコンクリートの地面に視線を向けると、黒い影が動いたように見えた。


 ドキッとして息を呑んだ瞬間、


「にゃあ………」


 前方で鳴き声………。


「………なんだ、猫ちゃんか。びっくりした………」


 歩道の脇で、小さな黒猫がじっと私を見ていた。


 この辺りで野良猫を見たのは初めてだ。


 それとも飼い猫かな?


 眼も真っ黒なその猫は、まるで影絵のように見えた。


「もう。驚かさないでよ、猫ちゃん」


 私は歩き出し、黒猫の傍を通り過ぎる。


「ミユゥ……」


 可愛い声で名前を呼ばれたような気がして。


 おもわず振り返ったが。


 黒い猫の姿はもうなかった。



*****



 いつもは素通りする朝の駅前で、私は先に着いているはずの猫賀御くんを探した。


───それにしても人が多い。


 当たり前か。通勤通学ラッシュだもんね。


 待ち合わせ場所は駅前にある時計塔の下辺り。


「美羽先輩!」


 時計塔に着く前に、私に気付いた猫賀御くんが駆け寄ってきた。


「───おはよう、猫賀御くん」


「おはようございます」


 うっ………わぁ!!!!


 猫賀御くんのにっこり笑顔に、なんだか朝からドキドキする。


 でも───あ、れ……⁉


 今なんかまた、


 ひゅッて。


 冷たい空気が………!?