頼まれた任務をきっかり一時間で終わらせ、由美子先生からご褒美に缶コーヒーを貰い、私と猫賀御くんはようやく図書室から解放された。


 私の家は徒歩で二十分くらいの場所で近くに駅がある。


 猫賀御くんはその駅から電車に乗って帰る。


 一緒の下校は駅までだ。


 校舎を出て歩きはじめてから、私は焦っていた。


 告白の返事、いつ言おう。


 今言うべきかそれとも駅に着いてからにしようか………。


───やっぱり今!


 迷ってる間に駅に着いちゃう。


「猫賀御くん、あのね!」


 急に立ち止まった私に猫賀御くんも足を止め、不思議そうな顔で私をみつめた。


「私、今日、猫賀御くんに返事をしなきゃと思っていて。………ぉお、お付き合いのこととかっ。告白されたお返事を………」


「ぁ………はい」


 猫賀御くんが緊張したように背筋を伸ばした。


「………私なんかでよければ………その、ぉ、お付き合いを………ぉお、お受けしたいと………思いマス」


 緊張のあまり(ども)るし、顔熱いし!


 猫賀御くんはそんな私に向かってニッコリと微笑んだ。


「ありがとう、美羽先輩。これからよろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げる猫賀御くんに、おもわず私もお辞儀を返した。


「こ、こちらこそっ。そんなご丁寧に!」


 顔を上げ背高(せいたか)の猫賀御くんを見上げると、あの〈錆浅葱(さびあさぎ)〉の瞳が優しく私を見下ろしていた。


 夕暮れも終わりかけ、薄闇が広がろうとしている空の色は〈藍色鳩羽(あいいろはとば)〉。


 染まりかけの雲がいくつもゆっくりと流れている。


 その中の雲二つが、猫賀御くんの頭の上で、猫耳になって付いているように見えた。


「わぁ………。今ね、猫賀御くんの頭の上で空の雲が猫耳になってる!」


「エッ。ネコミミ!?」


 なんだかとても可愛い。


 猫賀御くんは一瞬驚いたような顔をしたが、頭を掻きながら空を見上げ、また私に向くと、真面目な顔になって言った。


「手、つなぎたいです」


 猫賀御くんが私に手を差し出した。


「………はい」


───うわあぁぁ~。


 緊張する!


 私はゆっくりとその手に触れた。


………あ、やっぱり大きいな。


 猫賀御くんの手。


 包まれる感覚がなんだかくすぐったい。