突然の雨に、私は図書室の窓を慌てて閉めた。


「あーあ。今日降るなんて言ってましたっけ?天気予報」


 こう言いながら、窓閉めを手伝ってくれるのは後輩、一年生の猫賀御 瑞季(ねこがみ みずき)くんだ。


 昨日図書委員会を休んだ彼に、副委員長である私は議題内容の説明と資料プリントを渡すために彼を図書室へ呼び出し、話を終えたばかりだった。


「降水確率は低かったよね」


 私は答えながら、置き傘がなかったことに溜め息をついた。


「先輩、帰らないんですか?」


 窓から外を見つめたまま動かない私が気になったのか、猫賀御くんが近寄って訊いた。


「傘忘れちゃったの。ここで雨宿りしながら、もう少し様子を見るよ。
───お疲れ様、猫賀御くん。渡したプリントよく読んでおいてね」


「先輩、あのさ」


 いつもニコニコしていて愛嬌のある猫賀御くんが、なんだか急に真剣な眼差しになって私に向いた。


「あの…………先輩、俺……」


「どうしたの?」



───猫賀御くんって、よく見るととても整った顔してるんだなぁ。


 こんなに間近で見ることがなかったので私は驚いた。


 特に目が綺麗だ。


 えぇっと、この色は………。


 灰色よりも鈍色で、そこに青緑を重ねたような。


 私は大好きな愛読書の一冊『和名色図鑑』を脳内で開き、記憶の隅っこからその色名を探す。



…………錆浅葱(さびあさぎ)だろうか。