坂道の行き着く先はステージが設えてあって、タイムテーブルが組まれているらしかった。
いろいろイベントがあるけれど、それよりも模擬店の方が気になって、もう一度戻りながら気になる店を物色することにした。

「見たこともないお店ばかりで気になりすぎる。」

「うん、俺もこんなに奇抜な店ばかりだとは思わなかったよ。普通の店があんまりないよね。」

食べ物を扱う模擬店が一番多いけれど、美術学部のせいか、陶芸の食器を売っていたり絵画を売っていたり、これ売れるのか?という意味不明な芸術作品が並んでいたり。

そんな中で、春宮さんは似顔絵を書いてくれるお店で立ち止まった。

「これ描いてもらいたい。」

「似顔絵?いいんじゃない?」

「土橋くんと二人のやつ。」

「俺も?」

突然の申し出に心がざわつく。
ツーショット写真ならぬ、ツーショット似顔絵だ。

「1枚500円ですけど、お二人を描くならプラス100円になりますけどいいですか?」

美術学部の学生がにこやかに言う。
プラス100円で二人も描いてくれるなんて、お得すぎると思うけど、まあそこが模擬店のいいところだ。

俺たちは促されて学生の前に設えられている小さな椅子に座った。