その日、薫と華子は知らない街の

知らない病院に来ていた。

海に近く潮風の匂いのするその

街はどことなく寂しく弱々しく

感じられた。


薫は不安だったが華子と共に

診察を受けた。


「家に近い病院をご紹介しますから

そちらで診てもらってくださいね」

優しくニコニコとこちらを見て

その先生は言った。


帰りの道で華子は薫を勇気づけた。


「大丈夫!そこの病院で診てもらえば

もう大丈夫なんだから」


薫は不安だったが華子の言葉を

信じた。


「薫はちょっと頑張りすぎただけだから

これからは無理しないようにね」

「うん、、」薫は少し気持ちが軽く

なった。


バスに乗り一時間ほど揺られて家に

帰りついた。


薫はくたくただったが華子は笑顔で

「薫、何食べたい??」

「今日は玉子焼きにしよっか?」

「うん、、」

薫は大好きな玉子焼きを食べて

眠りについた。


5月になり、薫は母の日に華子に

ハナミズキの苗を贈った。


華子は嬉しそうに毎日水をやり、

愛おしい目でその苗を見ていた。

「薫、ハナミズキ咲くといいね」

「咲くよ!絶対!」

薫は咲いて欲しいと心から思った。


薫は相変わらず大学と病院の往復

だったがずっと苦しい気持ちを

抱えていた。


「母さん、僕学校辞めていい?」

「どうして??」華子は悲しげな

目をした。


「もう、つらいんだ、、卒業もできそう

にないし、、ごめんね」


「そう。分かったよ、大丈夫」

「薫はもう十分頑張ったから

これからは薫のしたいことを

しなさいね、、」


「ありがとう」

薫は必死に泣くのを堪えて言った。



その夜、華子はひとり泣いていた。