華子はその日、病室のベットから見える庭園の

桜を見ていた。

柔らかな陽光の中をゆらゆらとゆっくり

スローモーションのように桜が散って

いた。

「母さん、体調は大丈夫?」

薫は聞いた。


華子はニコリと笑って

「もう心配ないんだから」

「薫も帰って自分のことしなさいよ」

と薫を優しく諭した。


「うん、、」


「今度、本を持ってきて頂戴ね」

「あと、ラジオ聞きたいから

イヤホンもね、、」

華子は嬉しそうに薫に言った。


「持ってくるね。」

「母さん、また明日くるから」

薫はニコリと笑い、病室を後にした。

病室を出るとき、華子は寂しそうだった。


病院の通路を抜け、ナースステーション

に挨拶をして、桜の咲いている庭園を

通った。


そこには70代と思われる女性がベンチに

座り、ただ散りゆく桜を見ていた。


「桜って綺麗だな、、」

「たしか、、冬にはもう芽吹いてるん

だったかな、、」


薫は自分と桜を重ね合わせ、そんなことを

考えていた。

「いつか、花が咲くといいな、、」

薫は綺麗に咲き誇る桜をいつまでも

見ていた。