夢に見るのはもう何度目だろう。

それは、依と初めて会話をした高2の夏の日のこと。



隣のクラスの依とは、それまで一切接したことがなかった。

会話のひとつすらもしたことがない。それどころか目すら合わせたこともない。



けれど僕は、彼女のことを知っていた。

派手な見た目と、クラスも性別も年齢も問わず人気があり自然と人が集まってくるような存在とあれば当然だろう。



一方で僕はいつも勉強か読書ばかりをしていて、社交性はあまりなく友達も少ない。

クラスの中ではぶかれたり浮いたりしているわけではないが、『暗い奴』、『地味な奴』といった目で周りから見られているのはわかっていた。



けどそれでも、別によかった。

ひとりでいるほうが性に合っていたし、勉強に集中するのにもちょうどいい。

人間関係の揉め事に巻き込まれるのもごめんだったから。



それに、常に父から『将来』のためにと厳しくされていた僕にとって、青春も友情も恋愛も必要ないと思っていたから。