父に初めて本音をぶつけた夜。

夕食を終え部屋に戻ったらなんだか脱力してしまって、気づいたら眠っていた。



その日また夢に出てきた依は、笑顔で僕の隣を歩いていた。

長い爪をした細い指で、僕の手を握って。

記憶にも残らないほどの、なんてことない話をして、長い睫毛を伏せた。



高い鼻と小さな唇が綺麗な線を描く横顔に、ふと思い出したのは、付き合ってから間もなく依とふたりデートをした時のこと。

小さな水族館の大きな水槽前で交わした、初めてのキスのことだった。


人目も忘れてそっと交わした、触れるだけの短いキス。

赤くなるその頬を見て、僕も耳まで熱くなった。



恥ずかしい、ドキドキする。その気持ち以上に、彼女を愛しいと強く思ったんだ。