翌朝。

休みだった私は明日鷹先生の部屋でシャワーを浴び、トーストとコーヒー、スクランブルエッグの朝食を済ませて自宅へ向かう事となった。

「こんな時間になって大丈夫かなあ?」
少し心配そうな明日鷹先生。

「もう、25ですよ。朝帰りをどうこう言われる歳じゃないです」
笑って言った。

しかし、車が自宅に近づいたとき、
「ああ」
思わず反応してしまった。

「何?」
「いえ。あの、ここでいいです。家はすぐそこだし。ここで止めてください」
慌てる私に、不思議そうな明日鷹先生。

結局、自宅の前で車は停車。

目の前には車がもう一台。
私はこの車の持ち主を知っている。

「あ、ありがとうございました」
急いで車を降りた。

「待って。何なの?どうしたの?」
私の様子がおかしいことに気づいた明日鷹先生が、車から降りてきた。

ああー。
チラチラと家を気にする私。
かなり挙動不振。

すると、何を思ったのか明日鷹先生が家の方に歩き出した。

ええ?
「ま、待ってください。1人で帰れます。今日はこのまま帰ってください」
半べそをかきながらお願いする。

ジーと私を見る明日鷹先生。

「桜子、おかしいよ」

そう。私はおかしい。
でも、これ以上おかしな事になる前に、

その時、
「桜子」
家の玄関から、今一番聞きたくない人の声がした。

ああーー。
見上げると、明日鷹先生の表情が固まっている。

私は、恐る恐る後ろを振り返った。

「大地」
そこにいたのは、兄。

いかにも高そうなスースに身を包み、冷たい目でこちらを見ている。
ビジネスマンと言うよりヤクザ風。

「桜子・・・」
明日鷹先生が説明を求める。

「兄です。大地って言います」
「お兄さん・・・」
驚いているのがよく分かる。

突然の兄登場に私も明日鷹先生も驚きで動けなくなっていると、大地の方が近づいてきた。

そして、
「連絡もなく朝帰りか?」
凄みを効かせた声で言う。

「何よ。なんで大地がいるのよ」
「はあ?当直でもないお前が帰ってこない。携帯に出ないって母さんから連絡があったんだ」
見ると、母さんが玄関先まで出てきている。

「とにかく、中に入ろう」
明日鷹先生の冷静な一言で、私たちは家の中に入ることとなった。