5月の連休明け。
小児科にも1年目の研修医達がやってきた。
剛先生の下にも女の子が1人配属になった。
川田果歩。 24歳。
身長150センチの小柄でかわいい女の子。
彼女と並ぶと、160センチの私が大女に見える。

「桜子先生。検査指示はどうしたらいいですか?」
ニコニコ笑顔で聞かれると、つい手を貸してしまう。
「定期の検査そのままで。いつもと違うことがあったら必ず剛先生に確認して」
「はい」
返事もかわいい。
しかし、かわいい果歩ちゃんの本当の性格を私はすぐに知ることとなる。

研修医達も日々成長し、5月の終わりには当直勤務に就くようになった。

彼らを見ていると、どうしても去年を思い出す。
まだまだ私も彼ら側の人間だけど・・・
失敗しないかな?
大丈夫かな?
なんて気持ちになってしまう。

「果歩先生、お願いします」
「・・・」

ん?
果歩ちゃんの返事がしない。

私は声をかけた看護師に近づいてみた。
「どうしたの?」
「いえ・・・」
言いにくそうに言葉を濁す。

「すみませんが、桜子先生。点滴の指示出していただけますか?」
果歩ちゃんに無視された新人看護師が私に依頼した。

いいけど・・・

「果歩ちゃん」
「はい」
私が呼ぶと、寄ってきた。
「点滴の指示出してあげて」
「・・・はい」
不満そうに、それでも指示を出した。

「果歩ちゃん。スタッフはみんな仲間だから、そういう態度は良くないよ」
たまりかねて私も注意した。

指示出しを終え、私を見上げる果歩ちゃん。
なんだかとても意地悪な顔。

「先輩には関係ないですよね」
ええ?

その日から、果歩ちゃんが別人のように変わった。
剛先生の前では1オクターブ高音になるくせに、私や看護師しかいないと分かると、不機嫌丸出し。
その上、器用にそつなく業務をこなす。
手強い研修医が本性を現した。