クリスマスイブ。
俺はなぜか剛と2人で過ごしていた。

「ビールもらうよ」
両手にビールを持った剛がソファーに座る。

「俺はいいよ。最近酒は控えてるから」
「有香さん?」
聞きにくそうな顔。
「ああ。安定はしてるんだけど。一応、いつ呼ばれてもいいように」
「そうか」

剛はビールを俺はノンアルコールドリンクを飲みながら、クリスマス用のオードブルをつまむ。

なんだかんだ言って、すべてを話せるのは剛だけだ。
痛いところも突かれるし、
厳しいことを言われることもあるが、
ありがたい存在。

10年ぶりに突然現れた有香に病気が分かった時、相談できたのも剛だけだった。
医師としてあれだけ多くの患者を診てきているのに、身近な人間となるとこうも動揺するものかと思い知らされた。
そんな俺の愚痴を聞いてくれたのも剛。

「なあ、明日鷹」
ん?
「有香さんの心配もいいけど、桜子ちゃんとはどうなってるんだ?」
「どういう意味だよ?」

剛はグラスをテーブルに置き、ソファーに深々と座り直してちょっと偉そうに
「お前さあ、彼女のこと研修医としてしか見てないの?」
上から目線で、聞いてくる。
「研修医は研修医だろう?」

はぁー。
深い溜息。

「じゃあ俺が桜子を誘ってもいいのか?」
えっ?
「ちょっと待て。お前の好みと全然違うだろう?彼女にお前は無理だ。付き合う前から結果が見えている」
俺は剛の女性遍歴を知っている。
彼女みたいな子供じゃなくて、もっと大人の器の大きい人じゃないと。
「そんなの付き合ってみないと分からないし、ダメかどうかは彼女が決めればいい」
「何で?」
「何でって、かわいいし。俺は好みだよ」

嘘だろ・・・
段々腹が立ってきた。

「剛、お前帰れ。なんか気分悪いわ」


突然、
ハハハハ。
腹を抱えて笑われた。

「嘘だよ。嘘」
涙を流しながら笑っている。

「剛。お前いい加減にしろ」
本気で詰め寄る。

「ごめんごめん。そんなに怒るな」
「普通、怒るだろう」
「何で?」
真顔の剛。

「はあ?」
「だから、何で明日鷹が怒るの?」
逆に聞いてくる。

「おまえが俺をからかうようなことを・・・」
「俺は、明日鷹のことは言ってない。桜子を誘ってみようかと言っただけ」
「だから、彼女がお前の餌食に」
「それは桜子の恋愛だから、明日鷹には関係ないだろ」
「・・・」
返す言葉がない。

「明日鷹、俺が彼女のこと『桜子』って呼ぶと気分悪いだろう?」
「別に・・・」
言いよどむ。

フン。
剛は不敵に笑うと、ビールを飲みつまみに手を伸ばした。

「じゃあ、話を変えるよ。明日鷹、この間のクリスマスパティーで、彼女に怒ってたよな」
「ああ」
「やっぱり、あのセクシーな服のせい?」
「当たり前じゃないか」
あんな露出度の高い服で飲み会に来ればどうなるかなんて、分かりそうなものだ。

「何でだよ。セクシーな服はいいじゃない。俺は好きだよ。お前は嫌いなの?」
「それは・・・」

「なあ、明日鷹。普通の男はセクシーな女性が好きだよ。お前だって一緒だろう?でも、姉貴や彼女にされたら腹が立つと思う。身近な人は隠しておきたいから」
「お前・・・」
やっと、剛の言いたいことが分かった。

残ったビールを流し込み、剛は立ち上がった。
「じゃあ、言いたいことは言ったから、俺は帰るわ。これ以上いたら睨み殺されそうだし」

そして、リビングのドアに手をかけながら振り返り、
「明日鷹、桜子ちゃんにちゃんと言えよ。彼女も鈍感そうだから、言わないと伝わらないぞ」
そう言うと帰っていた。