「お疲れ様でした」

午後6時。
今日予定の検査は終了。
私はカルテ入力を済ませると、辺りを見回した。
患者さんはすでに帰宅し、残っているのは数人のスタッフのみ。
謎の美女との昼食以来機嫌の悪い明日鷹先生も、すでに姿がない。

「森先生、珍しく早く上がられましたね」
看護師さんも不思議そう。

それにしても、綺麗な人だったな。
大人の女性。
歳は・・・明日鷹先生と同じくらいだろうか・・・


「桜子先生、今日この後予定がありますか?」
突然、看護師さんが声をかけた。

「今日?」
声をかけてきたのは、看護師3年目の唯ちゃん。
彼女とは何度か食事にも行っている。

「この後飲み会なんですかど、一緒に行きませんか?」
飲み会か・・・
「急にキャンセルが出て、良かったらぜひ」
なるほど、人数あわせですか。

「残念だけど、今日は紗花と約束があるの」
断わろうとすると、
「和泉先生も一緒に。実は、駅前に先月オープンしたお店がやっと予約取れたんです」
手を合わせてお願いポーズ。

「一応、紗花に聞いてみるわ」
「ありがとうございます」



待ち合わせした、スペイン料理店前。

「桜子先生、和泉先生」
すでに唯ちゃんともう1人、病棟看護師の遙香ちゃんが店の前で待っていた。

「お待たせ」
「私達も着たところです。あの、実は・・・あと4人連れがいまして・・・」
言いにくそうな唯ちゃん

「合コンだったの?」
紗花が突っ込む。

あー、そういうことか。

「すみません。黙っていて」
唯ちゃんと遙香ちゃんが頭を下げる。

「別にいいわよ。私、この店のパエリヤが食べたかったの」
紗花は気にしない様子。
「私も別にいいけど」
なんとなく、流れに乗ることにした。
みんな合意し、4人で店に入ろうと歩き出したとき、

「1つだけ、」
紗花が条件を出した。

「4人とも看護師って設定にして」
「なんで?」
思わず紗花に聞き返す。
「女医って言うと引かれるから。下手したら、健康相談してくる人までいるし」

「分かりました。今日は紗花さんと桜子さんで」
唯ちゃんはそう言うと店のドアを開けた。


待っていたのは、同世代の男性4人。
服装はカジュアルだけど、学生ではなさそう。
それぞれが、会社員、公務員、銀行員と名乗った。

紗花が食べたがっていたパエリヤもおいしかった。

「桜子ちゃんは何科の看護師さん?」
「消化器科です」
「俺、先月胃カメラ受けたよ。医者が下手でさあ、苦しかった。」
「へー」
ちょっと苦笑い。


久しぶりに同世代と飲むのは、正直楽しかった。
料理もお酒もいつも以上にすすみ、少しずついい気分になった。


「この後、カラオケ行こうよ」
かなりお酒が回った頃、男性陣が言い出した。

でも、明日も勤務だし。
「私は」
断わろうとすると、

「桜子ちゃん、つきあってよ。紗花ちゃんも、唯ちゃん達も行くって言ってるし」
すでに私の荷物を持っていた。

「明日も仕事なのに、本当に行くの?」
一応聞いてはみたけれど、アルコールも手伝ってみんなウンウンとうなずいている。

「分かったわ」
私も行くことにした。



カラオケに行き、
さらにお酒を飲み、
学生の頃のようにバカ騒ぎをし、
店を出たのは午前4時前。


別れ際、
「こんな時間まで、付き合わせてすみません」
唯ちゃんが謝った。

「いいのよ。本当に楽しかった」
これは、私の本心。


「桜子。私このままあなたの家で、仮眠取って仕事に行くわ」
唯ちゃん達と別れた後、紗花と2人我が家に向かう。

「今日は合同カンファだから紗花もだよね。一緒に行こう」
このまま1人で寝たら起きられない気がする。

一緒に帰宅した私と紗花は、目覚ましを4つも並べ仮眠を取ることにした。