「麻白。俺の目は、誤魔化されないぞ」
「……っ!?酷い…龍心お兄様」
麻白は、泣き出してしまい茶室を飛び出そうとした。
まどかは、慌てて止めようとするのだが
そのまま行ってしまった。
「麻白さん。あの…いいのですか?
追いかけなくても…」
「麻白の方は、俺が後で話しておく。
それより悪かったね。恥ずかしい思いをさせて」
麻白の代わりに俺が謝罪した。
無理に追いかけなくても麻白は、すぐそばで
聞いていると分かっていた。それに…。
すぐに麻白を追いかけたら彼女を置き去りにしてしまう。
余計に傷つけると分かっていたからだ。
「あ、いえ…こちらこそすみません。
その…出来なくて」
落ち込む彼女を見て俺まで
胸が締め付けられそうになった。
彼女は、習っておかなかった自分に後悔をしていた。
情けない…と思っていた。
「まどか。それは、少し違う。
茶道は、本来お茶の風流を楽しむものだ」
「えっ?」
「確かに茶道には、流儀や作法などがある。
しかし本来は、こうやってお茶を飲みながら
仲間同士で談話して楽しむものだ。
洋風のお茶会だってそうだろ?
作法などで競いあうものじゃない。
それに、ここは…あくまでも俺の趣味。
俺達しか居ない。作法なんて…むしろ邪魔なだけだ」
俺は、そう言うと正座をしていた
足を崩しあぐらをかく。
そして、豪快に飲みほした。
大胆な行動に彼女は、驚いていた。
しかしあまりの大胆さに可笑しくなったようで
クスクスと笑いだした。
「あ、やっと笑ってくれた。
突然な事だったし、父親の事や
麻白の事があったから無理もないよな。
不安にさせて…申し訳なかった」