結局、聞かないため麻白も一緒になって
抹茶を飲む事になってしまった。
仕方がなく茶室で俺は、お茶を点てる。
なんだか微妙な雰囲気だ。
お茶を点て終わるとまどかの前に置いた。

「はい。まどか」

「あ、ありがとうございます」

そう言う彼女だが様子がおかしい。
どうやら初めての茶道に戸惑っているようだ。
その上に足が痺れて動けないらしい。
見てても分かるぐらいに身体がガタガタと震えて
顔色も悪い。あぁ、頭の中が混乱している。

泣きたい気持ちになっている彼女に俺は、
「まどか。作法は、気にしなくていいから。
意識しなくても普通に飲めば大丈夫だ」と伝えた。

「課長……」

「あら、作法も知らないのですの?
彼女のくせに」

目をうるうるさせながら俺を見るまどかと違い
麻白は、呆れたようにボソッと呟いてきた。
麻白……。

すると彼女は、お手本とばかりに抹茶を飲む。
麻白は、昔から俺に引っ付き同じ習い事をいていた。
お茶の作法も。だから慣れている。
しかしまどかは、初心者。
いくら何でも同じように比べるのも
出来て当たり前という考え方はおかしい。

まどかは、悔しさからか必死にやろうとするのだが
出された茶菓子のお饅頭が、転げ落ちてしまった。
すると麻白は、クスクスと笑いだした。

「あら、ごめんなさい。
茶菓子を落とす人なんて初めてみたので…つい」

馬鹿にされてさらに顔が真っ赤になるまどか。
涙目になっていた。それもそうだろう。
あんな風に馬鹿にされた上に失敗をしてしまったのだ。
麻白のやっているのは、人としても
大人としてもやったらいけない行為だ。

「麻白。ちょっと悪ふざけが過ぎないか?
まどかは、未経験だ。出来なくて当然。
それを笑うなんて失礼だぞ。まどかに謝れ」と
厳しく叱りつけた。

「わ、私は、そんなつもりでは、
ありませんでしたわ」